―さて、どうしたものでしょう。 平静を装っている私ですが内心はそれはもう凄いことになっています。 原因は勿論… 「ばか」 「…は、」 「ゆーちゃんの、ばぁか」 何を言い出すんでしょうか、この人は。 いや、まぁ…こんなことを言われてしまう心当りがなかったら逆に良かったのですが、そうではないので困っています。 でも完全に非を認めようものなら『黒可愛い』と称される野中藍さんに何をされるかわかったものではありません。 「え~っと、どうしましたか?」 引きつり笑いを浮かべながらご機嫌を伺ってみます。 「『どうしたの』じゃないよぉ、どうしたもこうしたもないでしょっ」 あ、はい、あの、 誠に…おっしゃる通りで…。
「限度っていうか節度? ん、ちょっと違うか…」 そんなきめ細やかな単語選択はいいじゃないですか。 もうおっしゃりたいことはビシビシ伝わってますから…。 野中さんがプンスカしてる内に状況説明をしたいと思います。 そもそもの発端は野中さんが私の家に泊まりに来た事でした。 直接的な単語ははしょって言うと、まぁ… 『昨夜はお楽しみでしたね』 と、いうやつで。 そして朝起きて、 『今朝はお楽しみでしたね』 と、なりまして。 累計6~7回はあの、まぁ…はい。 2日でそれだけこなせば身体に多少ガタが来るのは誰だって予想がつきます。 実際先日の収録は腰が痛くて本当に大変だったとこぼされていましたし。 …そこまでは(良くはないけど)良かったんです。
野中さんがお怒りなのは今日の午前中の出来事でした。 申し遅れましたがここはネギま!?のスタジオ内の控え室です。 いつもニヤニヤしながら私達を2人きりに仕向けるという素敵な配慮をしてくださる方々に囲まれているお陰で控え室では常に野中さんとだけ居られる、という訳なのですが。 それが今の私達にはまずかった…という。 「あたしかゆーちゃんの家ならいいよ?」 あっ、まだ回想終わってな… 「だけど『ここ』ではダメでしょっ!! ど う 考 え て も っ ! ! 誰か来たらどうするのっ!!まあしっかり鍵かかってたけど!!」 「…その件に付きましてはもう本当に弁解の余地が… …申し訳ありません。」 ひとつ言い訳をさせて戴くと、野中さんが涼ちゃんとベタベタベタベタベタベタするものだから、私もつい、その。
「あたしだってゆーちゃんのコト…大好きだし、 …するの、ヤなわけじゃないんだよ? だけどね?TPOってものがあるでしょっ」 「…本当におっしゃる通りで…。」 「バカップルは大変だねぇ~」 面白そうに突如部屋に現れたのは共演者であり、この業界の先輩である神田さん。 いつも利奈さんとお優しい御配慮をしてくださる方です。 「あ~、藍ちゃぁん、『うげっ』って顔しなーい」 「…最悪なのが来た…」 「え~?何なに、聞こえないよ~?」 「あ、今『最悪なのが来た』とおっしゃってまs(ry」 ドゴッ!! 鈍い音で私の頭上に野中さんの空手チョップが降ってきた。 「空気嫁―――――!!!このベットやくざっ!!!」 「おぉ~い藍ちゃん、彼女にそんなコトしたらダメっしょ~?幻滅されちゃうよ?」
「うううるさいっ」 「それよりも『ココ』でしちゃうなんてお盛んですこと(はぁと」 「んな…ッ? 何盗み聞きしてんの!?」 「人聞き悪いなぁ、盗聴してただけだって(はぁと」 「タチ悪い上に犯罪なんですけどっ!? 語尾に一々はぁとつけるなっつのっ」 「っていうか『ココ』で求められてしっかり受け入れてる藍ちゃんも藍ちゃんだよねえ(はぁと」 「ぐ…」 「ほんとにダメなら幾らでも拒否できるじゃぁん、ゆうちゃん優しいし(はぁと」 「あーもううるさいなーっ!! その餌袋にヒマワリの種でも詰めに行きなさいよ~っ もうストックないんじゃないのっ!?」 「私にヒマワリの種が足りないなら藍ちゃんにはカルシウムが足りないよねっ(はぁと」 バタン。 神田さん強制退出。
「……………」 2人の物凄い剣幕に口を挟むことすらままならなかった私は勢いよく閉まったドアを呆然と眺めていた。 そして、自然な流れで野中さんに目を向ける。 「あ、あの…野中、さ !?」 その横顔に光る流れるものを見て、表面だけでも取り繕っていた平静はすっかり剥がれ落ちた。 「の、の、のな、のな、野中さんっ!?」 「…ぅっ。 ぐ…っ」 両手でどんどんあふれ出す涙を拭いながら、嗚咽を漏らす。 どうしたらいいか分からなくて、私はその小さな身体をそっと抱きしめた。 少し香水の香る髪を優しく撫でる。 10分位、そうしていただろうか。 「ゆ…ちゃん」 「はい…?」
「キライに、なった?」 「…はい?」 「あたっし、の、こと、キライになった? 幻滅した…?」 ―何を、言い出すんだろう。 そんな…嫌いになるなんて、そんなこと。 「大好き…ですよ?」 思わず腰に回した腕に力を込めた。 届くように。伝わるように。 「大好きです、野中さん。 だいすき、です。」 こん、とその頭に額を乗せて言った。 「…うん。」 「どうして…そんなこと思うんですか?」 私には野中さんしかいないのに。 野中さんしか見えないのに。 「だって…あたし…余裕ないし…すぐ怒るし…自分勝手だし… さっきなんかゆうちゃんのこと…ぶった」
「痛くなかったですよ?」 「問題…そこかよぅ…」 「???」 「だって、神田さん…『そんなんじゃゆうちゃん幻滅する』って…さっき」 「するわけ、ないじゃないですか…」 一息吐いて、ぎゅぅっ、と抱き寄せる。 「しないの?」 「しません」 「ほんとに?」 「本当です」 「あたしのこと、好き?」 「愛してます」 ようやく、野中さんが私の背中に腕を回した。 某旗様の計測によるとDカップはあるらしい野中さんの胸がものすごくピンポイントで当たっていて内心心臓バクバクなのは…、黙っておこう。
「ごめんね、ゆうちゃん」 「いいえ、…というか…私の方こそ」 「そういえば原因ゆーちゃんなんだよね…」 う…っ。 何やら嫌な予感… 「台本っ台本の読みでもしましょうかっ」 「コラ、誤魔化すな」 「あ…あは…」 「ゆーちゃんさー…『何でもする』って言ったよねー」 野中さんに黒いオーラが充満している。 …ま、まずい… 「今思い付いたから」 「な、何でしょう…」 「えっちなこと禁止。一週間。 ちゅーもダメ。ゆーちゃん歯止め利かないし」 ………………。 な、それは…なんて過酷な…
「……………がんばります…。」 一週間なんて、すぐですよ。すぐ。 ………多分。 「うん。 えっちなのはいけないと思います。」 「は…はは…」 じゃあ今のこの状態もダメか、と名残惜しく腕をほどいた。 「―でもね?」 「ふむぐっ!?」 えっちなこと禁止~とか言ってた矢先に野中さんからのキス。 あたしからなら、OKなんだよ? 少し長めのキスをして、野中さんが笑った。
何ですか、そのルール? あぁ、もー… ―大好きです、野中さん。 おわり 【おまけ】 「あの」 「んー?」 「ベットやくざっていうのは…?」 「ん~? 普段はへろ~んとしてて優しいクセにベットだと豹変する人のこと。」 ズガンボーン…
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